きみの好きなところを数えたら朝になった。



先輩は誰よりも優しくて素敵な人。

だからこそ、いつまでも繋ぎ止めてはいけない。

先輩にも前に進んでもらいたい。私はもう先輩には頼らないし甘えない。突き放すことが私の先輩にできる最初で最後の恩返しだと思うから。


「分かった」

先輩は私の気持ちを汲み取るように静かに頷く。

そしてポケットから〝あるもの〟を取り出した。


「じゃあ、これだけは受け取ってくれる?」

それは見覚えのあるキラキラとしたかんざし。


「こ、これって……」

「うん。あのときの。すごく似合ってたから澪ちゃんに付けてほしいと思って」

右手に乗せられたかんざしは軽いはずなのに重く感じて、先輩の優しさに涙が出そうになる。

本当に本当に、感謝してもしきれない。

先輩がいたから、乗り越えられたことがたくさんあった。


「……ありがとうございます」

涙をグッと堪えた。

最後くらい泣き顔じゃなくて笑顔でいたい。だって苦しいときに先輩の笑顔で、私は何度も救ってもらったから。


「俺は澪ちゃんの幸せをいつまでも願ってるから。……だから幸せになってね」

「はい。先輩も」


もし10年後に振り返ったときに、私はこの瞬間のことも思い出すのだろう。そのときも笑って話せたらいいな。

できるなら今よりもずっと大人になった先輩と、お酒でも飲みながらお互いの幸せを語り合う未来がくることを私は願っている。