きみの好きなところを数えたら朝になった。



家に帰るとすでに西崎がリビングにいた。ソファーに座っていた西崎は私を見るなり慌てて駆け寄ってくる。


「ど、どうしたんだよ……?なんでそんな濡れてんの?」

私はバケツの水を頭から被ったようにびしょ濡れで、足元のフローリングに水溜まりができるぐらい。

ポタポタと前髪から水が垂れてきて冷たい。

私が無言のまま立ち尽くしていると西崎がタオルを持ってきてくれて、そのまま私の髪の毛をガシガシと拭きはじめた。


「お前傘は?今朝持って行っただろ?」

手加減がない西崎の拭き方はちょっと痛い。それでも水でまとわりつく制服が気持ち悪くて感覚がない。


「……盗まれた」

私は消えそうな声で答えた。

西崎は「マジかよ」と何故か不機嫌な顔をして、そのあとはやっぱり痛いぐらい私の頭をよく拭く。


「そういう時は電話しろよ。傘ぐらい持って行ってやったのに」

「………」

桃香ちゃんと仲良さそうに帰ってた人がなにを言ってるんだか。

だったらあのとき名前を呼んで傘がないと言ったら西崎はどうしたの?桃香ちゃんを置いて一緒に帰ろうと言ってくれた?

そんなわけない。

西崎は彼女を大切にするヤツだし、私の優先順位なんて限りなく低いからきっと後回し。

そんなことは考えなくても分かることなのに、ずぶ濡れでひとりで帰ってきた自分があまりに情けなくて惨めだ。