魔王と王女の物語 【短編集】

「よう」


浅瀬の岩礁に隠れて居 いたアマンダに会いに行ったコハクは、疑い深い目でコハクを見ていた。

ラスと居る時は大人しくしていたがーー単独で目の前にいるコハクにはやはり魔王たる雰囲気く が醸し出されていて身を引いてしまう。


「何故ひとりなの」


「いやあ、お前を研究したいとか言えねえだろ」


ーーやはりというかそれが目的だと分かり、アマンダはコハクを激しい目で睨みつけて牙を剥き出しにした。


「あなたは魔王でしょ。永遠の命なんて興味ないはず」


「ああそれには興味ねえよ。オレが興味あんのはお前の生態だ。その尾っぽ触らせてくれよ」


…実は研究熱心な魔王。
人魚は今まで生きて来た中でまだ見たことがなく、ラスとの約束はもちろん一石二鳥というわけでアマンダににじり寄る。


「い、いや!」


「なんだよ触るだけだっつーの」


「いやらしい顔してるからいや!」


なかなかに失礼なことを言われても全くへこたれない魔王は、腰に手をあててアマンダを慇懃無礼に見つめた。


「王子との仲を取り持ってやるって言ってもいやか?」


「…え?」


「その尾っぽ、人の足にしてやるって言ってんだよ」


そんなことが可能なのだろうか?

いや、魔王ならできるかもしれないーーアマンダはごくりと喉を鳴らして身を乗り出した。


「…可能なの?」


「まあ魔法っつーか呪いの類だけどな。やるか?」


元々は種族違いで許されない仲。

王子が自分をどう思っているのかわからないが、想いは伝えたいという気持ちはある。


「でも…呪いなんでしょ?」


「まあな。足と引き換えに代償がいる」


代償ーー

アマンダはさらに身を乗り出す。


食いついた!

魔王の赤い目が光る。