魔王と王女の物語 【短編集】

「人魚さん、名前を教えて?」


「…私はアマンダ。私は王子様に助けてもらったの。彼を困らせようなんて思ってないわ」


「実際問題王子様はお前の存在を隠してるからバレた時責められるのはあいつだぜ」


アマンダは真っ赤な唇を噛み締めて俯いた。
ラスはそんなアマンダが可哀想で何とかしてやりたいと思っていたが、魔物は人を惑わせるし食うこともあるーー


コハクならどうにかできるかもという一縷の望みをかけて見つめていると、悪さをしようとする時のにやついた表情をしているコハクに駆け寄ったラスは駄目押しをした。


「コー、悪さしちゃ駄目」


「悪さっつうか助けてやってもいいなーって思ってるだけー」


さめざめと泣いているアマンダの前に立ったコハクは上体を折ってアマンダの耳元で囁いた。


「明日オレだけでここに来るから待ってろ」


「!な…何をするつもりよ魔王…!」


「助けてやるっつってんだよ。チビや他の奴には言うなよ」


…もう嫌な予感しかしない。

だがアマンダはコハクの真っ赤な目に魅せられて頷くと、ラスに手を振って海中へと消えて行った。


「コー、なんのお話してたの?」


「日中は危ないからここに居るなよって注意しただけー」


「優しいっ。王子様もアマンダのこと好きだといいな…」


「んー…」


人魚は欲深く嫉妬深い。

もしディノと両想いだった場合、人魚が陸に上がって生活するのは到底無理だ。


「なんだよ超面白くなってきた!」


魔王様、大コーフン。