口を挟んだ一弥を睨みつけると、一弥は冷や汗をかき、何も言わなくなった。
「滋を探しているとなると、滋との思い出の場所に行くというのが手っ取り早い」
知由が空になったコップをカウンターに置くと、雪兎はそれをさげた。
「どちらか、滋の地元を知らないか?」
一弥と海に尋ねるも、返事はない。
「お前らも使い物にならないではないか。仕方ない、やはり無理にでも滋を使うしかない」
返す言葉もなく、二人は手のひらに爪痕が残ってしまいそうなくらい、強く手を握りしめた。
そんな二人を無視し、注文を伝えに戻ってきた滋に話しかけた。
「おい、滋……」
「ちょっと待ってね、みさきちゃん。ゆっきー、あそこの女子高生二人のところにアイスティー二つ、お願い」
知由の言葉を遮った滋は、裏に入っていった。
仕事のために質問を遮られたため、知由は文句もなく、不服そうな顔もしなかった。
ちなみに、この喫茶店は飲み物はカウンターの奥、食べ物系は裏で用意する。
滋が裏に入ったということは、何かの食べ物の注文があったのだろう。
「ちぃちゃん、運んできてくれる?」
知由は椅子から飛び降り、二つのコップを乗せた銀製のお盆を受け取る。
そしてそれをこぼさぬよう、ゆっくりと女子高生二人のところに運ぶ。
「お待たせしました」



