「あたしの母親は……」



すると知由の言葉を遮るように、ドアが開いた。


黒く大きめの帽子に、サングラスをかけた、少し怪しげな女性が入ってくる。



「あの、今日はやってないんです」



すぐさま雪兎が彼女に近寄る。



「喫茶店に用があって来たわけじゃないわ」



女性はそう言いながら、サングラスと帽子を取る。


その女性の顔を見て、みんな目を見開いた。



そこにいたのは、今話題の実力派女優、夢郷未咲(ゆめさとみさき)だったのだ。



「探偵に依頼をしに来たの。喫茶店がお休みのときに依頼を受けてくれるんでしょう?」


「そうですけど……」



雪兎は戸惑いの表情を隠せなかった。



「話を聞いてやれ、雪兎。そうすれば誘拐事件の真相が少しわかるだろう」



知由はゆっくり立ち上がり、調理場に入っていった。



「では、こちらに……」



雪兎は知由に言われた通りに、彼女を席に案内し、話を聞く体制を取った。