梓がそう答えると、雪兎は知由の隣に座った。
「人を探してほしいんです。一年くらい前から行方不明の、私の中学からの後輩で……二年前に連絡が途絶えた幼馴染を探すと言って、そのまま……」
「お名前は?」
「堀夏芽(ほりなつめ)です」
梓が名前を口にすると、知由たちの後ろでガラスが割れる音がした。
驚いて振り向くと、滋がその近くでかがんでいた。
「おいおい、どうした? コップ落とすとか、滋らしくないな」
ほうきとちりとりを手に、一弥が滋に声をかけた。
「ごめん、一弥。ちょっとね……」
そう言う滋の手は震えていた。
「滋、堀夏芽を知っているだろう。というか、堀夏芽が探している幼馴染というのは、お前のことだな?」
いつの間にか二人のもとに来ていた知由は、笑顔を消していた。
「……そうだよ。心配かけないようにって、黙って自首しちゃって……」
「それで、逆に心配かけていたら、元も子もないな」
「そう……だけど……」
滋は床を見つめたまま、動こうとしなかった。
そんな滋を放って、知由はもとの席に戻った。



