「……そんなに褒めるな」
知由は窓の外に顔を背けた。
真っ赤になっている顔を滋に見られたくなかったのだ。
まあ、滋は窓で反射しているのを横目でしっかりとそれを確認したから、意味なかったが。
「さ、着いたよ」
滋はそう言ってエンジンを切った。
二人はほとんど同時に車を降りる。
そこには、草むらしかなかった。
高さは知由の身長くらいか、それより高いくらい。
草の高さに、知由は思わず言葉を失った。
「この草むらの中に、古い建物があるんだ。そこが、僕たちの秘密基地」
「この中を歩くのは無理だな」
「あ、そっか」
すると滋は軽々と知由を抱き上げた。
「な、何をする!」
滋が予想外の行動をしたものだから、知由は動揺が隠せない。
反論をしようと滋を見ようとすると、滋の顔が真横にあるもんだから、さらに動揺してしまう。
「これなら進めるでしょ? ダメだった?」
ダメだ、と返したかったが、そうしてしまうと夏芽探しが遅れてしまうとわかっていたからこそ、知由は返す言葉がなかった。
知由の沈黙を同意と捉えた滋は、そのまま足を進めた。



