「……ゆっくりさせてどうする。さっさと帰らせろ」



消えゆく滋の背中に、そう言った。



「まあまあ。お客さんなんだし、我慢しよ、ね?」



雪兎の言葉に、知由は舌打ちをしてそっぽを向いた。



「滋に話があるなら、今してきたら?」



そう言われると、知由は黙って中に入った。



中に入ると、滋は奥にある一つの丸椅子に座っていた。


俯いて何かを考え込んでいるようだ。



知由はそっと滋の前に行く。



「滋。今話せるか?」



誰もいないと思って休憩モードに入っていたようで、知由の声に一瞬驚いたように見えた。



「……夏芽のことでしょ?」


「ああ。どこにいるか、心当たりはないか?」


「ある」



知由の質問に、滋は即答する。



「僕たちの秘密基地。昔、寂しくなったら、そこに行くっていう約束をしたんだ。夏芽が今寂しいかはわからないけど……」


「そこにいなかったら?」


「……お手上げかな」



滋は苦笑した。