スマホをいじりながら話していた二人は、声がしたほうを見る。
そこには目当てとした滋ではなく、知由がいる。
「あれ、イケメンウエイターさんは?」
「ガキには用ないんだけど」
「……すぐ来ますので、お待ちください」
今にも爆発しそうな怒りを抑えて、知由はテーブルにアイスティーを置く。
すると、滋がパンケーキを運んできた。
彼女たちはわかりやすく目をハートにする。
「お待たせしました。パンケーキになります」
目の前にパンケーキが置かれているというのに、彼女たちは滋に夢中だ。
「名前、聞いてもいいですかー?」
滋が一礼してさがろうとすると、一人が引き止めた。
何かしらの関係を持っていたいらしい。
「櫻井滋ですよ」
滋は苦笑混じりに答える。
その隙に、知由はお盆を持ってもとの席に戻った。
「じゃあ、彼女いますかー?」
どこにいても聞こえてくる彼女たちの声。
本気で目の前の滋に夢中で、周りの迷惑にも気付いていないようだ。
「残念ながら。気になる人はいるんですけどね。では、ごゆっくり」
滋は彼女たちの次の質問を待たずして、奥に入っていく。



