泣くのがバレないように、私は勢いよく、千秋に抱きついた。
笑顔になってたかは、もうわからないけど。
「ただいま、花」
それから千秋は検査を受け、なにもないと診断された。
でも、あと二週間くらい入院するらしい。
「じゃ、俺ら帰るわ」
しばらく話してから、野澤君がそう切り出した。
「またね、花。三神はちゃんと回復しろよー」
わかってはいたけど、野澤君が帰るって言ったことで、麗も帰る支度をした。
「おう、ありがとなー」
椛さんはなにも言わなかったけど、三人揃って帰っていった。
「姉貴、なにか飲み物買ってきてほしいんだけど」
それからすぐ、千秋はお姉さんにそう頼んだ。
「はいはい」
いつもなら絶対に断るであろうに、お姉さんは文句すら言わなかった。
そして、お姉さんも病室を出て、残ったのは私と千秋だけになった。
「やっと二人になれたな」
意図的にやったのね。
そんなことだろうと思ったけどさ。