いよいよお父さんと会う約束をした、週末になった。



待ち合わせ場所に向かう途中、麗から電話がかかった。



「もしもし?」


「花ー!」



電話先の麗は、私が出た瞬間に泣き叫んだ。


あまりの声量に、私は思わず携帯を耳から離した。



「どうしたの?」


「嵐士が最近相手してくれないのー」



まあ、そんなことだろうと思いましたよ。



うーん……


どう答えたらいいのかな。



「今日だってね?前からデートの約束したのに、用があるって断られたの!それもドタキャン!」



迷っていたら、麗が話し始めた。


単純に、話を聞いてほしいだけなのかな。



「それはひどいね。理由は聞かなかったの?」


「聞いた。家の事情だって。もう、最近の嵐士、そればっかりなんだよー」



そういえば、ダブルデートのときも、家の事情で先に帰ってたっけ。



「野澤君の家に行ってみたら?」


「家知らない。てか、嵐士の家族のこと、なにも知らないの。嵐士が話したがらないから」