すると、私が拾うよりも先に、三神君の手が伸びてきて、弁当を拾った。
「千秋!?」
「悪いけど、これ、俺のだから」
「は!?なに言ってんの、それはこいつのでしょ!?」
彼女は床にしゃがむ私を指さした。
「俺が、西野に頼んだんだよ。な?」
否定する理由はなくて、私はただ頷いた。
「なんでこいつが千秋に弁当を作るのよ!」
「理由なんかどうでもいいだろ」
三神君はそれ以上は言わなくて、弁当を持ったまま、もとの輪に戻った。
彼女はもう一度、泣きそうな顔をしながら私を睨んで、教室を出ていった。
というか、弁当!
あれ見て失望されるのは嫌だな……
あ、そうだ。
「み、三神君!」
輪の中心にいる三神君を呼ぶと、周りにいる人たちも私のほうを振り向く。
「なに?」
「あの、さっきの弁当は本当に私のなの。三神君のは、こっち……」
三神君の顔を見るのがなんだか怖くて、私は弁当を差し出すと同時に俯いた。
すると、急に手が軽くなった。



