「花?マジで大丈夫か?」
千秋は私がうつむいたのを、体調不良と捉えたらしい。
「うん、大丈夫。ちょっとお母さんのこと、思い出しただけだから」
「……そっか」
千秋はそれ以上なにも聞かず、黙って隣に座っていた。
周りが賑やかだからか、私たちの静かさがよくわかる。
数十分はそのままだった。
「……セン君?」
すると、見たことない、小柄で可愛らしい女の子が目の前に立っていた。
隣を見ると、千秋は目を見開いていた。
てことは、千秋の知り合い?
どうして千秋が知ってる女の子、みんな美人さんなの……
「セン君だよね?わあ、久しぶりー!」
その子は、私なんか目に入ってないみたいだった。
「……ああ」
千秋の声は、隣にいる私でもギリギリ聞き取れたくらい、小さかった。



