「先輩、甘えるってなんですか?」

「なんか、くるみ先輩って私の理想通りの先輩かも。今までの先輩って、まぁー、やばい人たちだったけど、優しくて嘘っぽくなくて、何よりお兄ちゃんが自然に笑ってた。」





実乃里の言葉が直接私の心に響く。





チクン、チクン、とまた胸が痛い。




止まれ、止まれ。





「くるみ先輩だったら、お兄ちゃんとお似合いかもしれないなー。沙代はどう思う?」




実乃里が私に笑いかけて言う。





「私、は・・・・・・・私は・・・・・・っ、ごめんっ。」





「えっ!?沙代っ!?」





私は席を立って、扉に向かう。





「あれ?沙代?もう食べ終わったのか?」





鳳駕に話しかけられたけど、無視して通り過ぎた。




そのまま教室を飛び出して廊下に出る。




人と人の間を通り抜けて、中庭に来た。




ここならあんまり人がいないから。




ぎゅっと、自分の胸のあたりを掴んだ。




痛い、痛い。




私は中庭の階段に座って、呼吸を整える。




下を見ていると、誰かの走る音が聴こえる。




だんだんその音は近くなって、急に聞こえなくなった。





「魔女って、足速いっけ?」




俯いた顔をゆっくりあげると、後ろに息を切らした鳳駕の姿。




「え?なんで?」




「なんでじゃねーだろ。人の話無視しやがって。」




そう言いながら私の前に来てしゃがみ込んだ。