普通の家族が熊谷家だったら、私は熊谷家みたいな家族が欲しい。




そんな事言っても無理なんだけど。




「お姉ちゃん。寝れないから本読んで。」




「うん。今行くね。」




小学生って言ってもまだ甘えたい年頃なんだろう。




私は千裕と公の部屋に行って本を読む。




読み始めるとすぐに寝てしまった。




そっと本を棚に置いて私は部屋を出る。




リビングからはお母さんとお父さんの声が聞こえる。




「だから、言ってることとやってる事が矛盾してるでしょって言ってるの!!そういう所が嫌なのよ!!」




「俺だってこんな所にいたくない。俺の夢をお前が潰したんだ。」





また始まったこの話。




お父さんはお母さんと結婚して、夢だった写真家を諦めて会社に入った。




お母さんはやりたかった広告会社に務めているけど、思っていた仕事と違って今はいやいややっている。




どちらも上手くいかなくて、お父さんは写真家になれなかったことをするお母さんのせいにする。




そんなお父さんが情けないと、いつまでそんなことを言ってるんだってお母さんが怒る。




「そうね。・・・・・あなたと結婚しようとした私が悪いわ。最初の間違いよ!!」




「この際、言っておくけど、・・・・・俺はお前のことを愛していない。」