諏訪さんは、どうして私をメダルゲームになんて連れて来たのだろう。考えてみたら夕飯が牛丼屋さんだったのも、たぶん早く食べ終わってゲームセンターへ行きたかったからみたいだし。

 そんなにやりたかったのかな……?


「あの……諏訪さん」

「ん?」


 思い切って聞いてみようと思った。諏訪さんが何を考えているのか、知りたかった。


「どうしてメダルゲームに私を連れて来たんですか?」


 車は静かに信号で止まった。


「元々母親がメダルゲームが好きでさ、俺もよく連れて来られてて。それに神楽木、今疲れてるだろ?」

「え? ……はい、そうですね」

「そんな顔してる」


 信号が青に変わり、また走る。窓の外に通り過ぎる街灯や明かりが、諏訪さんの横顔を照らしていた。


「これなら、今夜ぐっすり眠れるだろ?」

「え……?」

「仕事終わって一人で帰ったら、どうせお前の事だから、ぐるぐる今日の失敗考えちゃって朝まで眠れなくなりそうだったから。どうだ? メシ食ってメダルゲームやって、ジャックポットなんか当たって、仕事の事どころじゃなかっただろ?」


 諏訪さんは……私の事を考えてくれていたんだ。

 確かにあのまま帰ったら、きっと自分のダメさ加減を考えすぎて、朝まで眠れなかっただろう。でも、メダルゲームに夢中になったお陰で、今の今まで仕事の事は考えていなかった。

 だから諏訪さんは……


「今日のミスの事はもう、反省したろ?」

「はい……死ぬほど……」

「それに、自分で動いて何とかしようともした。だから、仕事が終わった今はそれ以上は考えなくていい。後はまた仕事で、同じ事を繰り返さないようにすればいいんだ」

「はい……」


 俺も今まであり得ない失敗は山ほどしてる、と言って諏訪さんは笑った。