翌日の朝。
誠のスマホには案の定成海から歓喜のメッセージが大量に届いていた。
5、6個送られて来たメッセージに一言、
『よかったじゃん、おめでとう。』
とだけ打ち込み送信。
これだけ冷たくあしらっても、成海にはかすり傷にもならないので返信には困らない。


朝食を済ませて誠はそそくさと家を出た。
両親は共働きで朝早くに家を出るため、自分で起きて自分で準備する。
自然とそういった習慣が染みついているので遅刻はしない。

誠は集合場所の駅まで小走りで向かい、軽くウォーミングアップ。
今日の練習試合が楽しみすぎて逆によく眠れたので体が弾む。

「あ、誠〜!おはよ!絶好の練習試合日和だね!」

「おはよ希美。そうだね、最高。」


少し笑いつつそう返すと、希美は天使のような笑みで笑い返してくれた。
今日も頑張れそうだ、と誠は改めて実感し、集合時間までの僅かな時間を希美とたわいもない話で過ごした。


集合時間から5分後、1人のマネージャーが遅れてやって来た。


「あれ?皆さんもう着いてたんですね!
おはようございますー。」



倉田眞澄(くらた ますみ)
つい1週間前に女子バスケ部にマネージャーとして入部した1年生。
癖のある短めの髪、低めの身長、明るそうな性格だと最初は思っていたのだが、どうやら男バスのマネージャーになるべく入部届けを出したところ、人数がすでに足りていたため女バスに回されたとのこと。



「おはようございますじゃないよ。
5分遅刻してるんだよ?マネならもっと早く来るべきでしょ。っていうか、遅刻自体あり得ないから。」

「まぁまぁ、希美落ち着いて。
まだ入部して1週間しか経ってないんだし、しょうがないよ。」

「りみ先輩…。っ、わかりました。
とにかく、今度から気をつけて。」


運動部、しかもバスケ部で集合時間に遅刻というのはかなり信頼を損なってしまう行為だ。
希美の言いたいことは、誠にもよくわかっていた。新入部員だからといって気を緩ませるわけにはいかない。