部活が終わり、明日の連絡を頭に叩き込んで、誠は正門へ向かった。

手にしていたスマートフォンをリュックサックにしまうべく、チャックを開け中を見てみると、

「あれ、筆箱忘れて来てる。はぁー最悪。」


中に入れたつもりだった筆箱がないことに気づいた。
誠は3階の教室まで階段を駆け上がり、部活終わりでパンパンの足を必死に上げ教室へ。
ふと2階の踊り場から声が聞こえ、誠は足を止めた。


「ずっと君を見てた。
もしよければ、付き合ってほしい。」

「え…ほ、ほんとですか?」


告白に驚いた声は誠にとって身に覚えのある声だった。
少し高く、可愛らしい声。
誠は息を潜め、2人の死角からそっと除いた。


「成海…と、小木先輩?」

艶のある黒く長い髪、眉のラインで揃えられた前髪を触りながら、告白された''成海''はもじもじと考えるそぶりを見せている。
告白したのは、成海が『彼女になる。』と豪語していたあの小木昇李だった。


「私で、いいんですか…?」

「佐倉さんがいいんだ。駄目、かな?」

「……私も、先輩が好きです!」

「ほん、とに?やばい、超嬉しい…。」


2人は誠に気づくことなく、自分たちの世界に入りついにはカップル成立までしてしまった。
誠は目の前で起こったことに若干焦りながらも、明日は学校中が荒れ、成海には羨みの目が向けられることだろう、と頭の隅でそんな考えが浮かんだ。

踊り場でじゃれ合う2人を見て、誠は少々呆れながらも別の階段で3階へ歩を進めた。