「なるのお姉ちゃんが言ってたけど、高校でたくさん付き合ってたくさん別れるの経験しといた方がいいんだって!
お姉ちゃん大学生なんだけどね、彼氏ができると結婚までしないといけないプレッシャーが凄いって!」

「量より質だよ成海。量積み上げるより、本当に良いと思った人との経験の方がずっと良い。」



成海はむっと真っ白な頬を膨らませ、諦めたように窓の方へ顔を背けた。
窓の外には広大なグラウンドが見える。
昼練をするラグビー部や野球部、自主練中の陸上部がそこかしこで走ったりぶつかったり。

そんな中、グラウンドの隅の方で、シュート練習に励む1人の男子生徒が成海の瞳に映った。

その瞬間、成海は大きな目を見開き輝かせ、窓枠にのめり込むように男子生徒を見つめ始めた。


「はぁ〜、やっぱり昇李先輩かっこいいよ〜。」

「また見てんの?ほんと好きだね。」


小木昇李(おぎ しょうり)。
3年の先輩でサッカー部副部長。
少し茶色の入った黒い髪が、太陽に照らされるたび眩しく輝く。
ルックスは百点満点で、目鼻立ちはまさにモデルや俳優のよう。
鍛え上げられた肉体美がTシャツ越しでも主張されている。



「当たり前でしょ〜?先輩が卒業するまでに、なるは先輩の彼女になるの!
はぁー、なる何でサッカー部のマネしなかったんだろ〜。」

「成海は吹奏楽やってる方がいいよ。
正直言ってマネできると思えないし。」

「まこちゃんひどーい!そんなことないもん!なるこう見えても仕事はしっかりこなす方なんだよ?」

「はいはいごめんごめん。」

「まこちゃんったらまったく…。
あ、そういえば今日昼練無いの?」

「うん、この後新入生のスマホ講習あるらしいから使えないんだよね。
いつもなら体育館使えなかったら自主的に外で走るんだけど、今日はゆっくりご飯食べたいなーって。」


「なるほどね〜。」