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衝撃的な告白から数日。
誠はどこか上の空だった。
声をかけられても返事は数秒後、外周も気づけば20周以上走っていたり、ボールが顔面に飛んできても避けることなく直撃したり。
「誠ー…最近大丈夫?試合今週末だよ?」
「…えっ?あーうん。大丈夫、多分。」
「多分って…一体何があったの?」
「いや、何もないよ…。ちょっと最近疲れが取れなくてさ、あはは。」
「そう?夜更かししないでちゃんと寝てよね!」
希美からお叱りを受けた誠だったが、そのお叱りさえも頭には残らなかった。
朝練を終えて希美と教室へ向かうと、誠のクラスの前に人だかりができていた。
「誠のクラスの前にすごい人いるけど…何かあったのかな?」
「ほんとだ、どうしたんだろ。」
とんでもない人だかりは、ほとんどが女子だった。
2年の女子が各クラスから集まって誠のクラスの前に溜まっているようだった。
その輪の中から少しだけ見えた顔は、誠にとって見たことのある人間だった。
「あれ、成海…?」
「あっ!まこちゃーん!おはよ!」
「成海…おはよう。なんなのこれ、なんの集まり?」
「わかんない!朝練から帰ってくるまこちゃんを待ってただけなのに、囲まれちゃったの…。」
「は、はあ。」
成海が囲まれた原因はなんとなく察することができた。
『小木昇李とお付き合いを始めた佐倉成海』という存在が学校中に知れ渡り、どんな者かと興味を持った女子がわさわざ見に来た、といったところだろう。