自クラスである2年5組は、誠の2年2組と階が違う。
5組は4階にあり、誠のいる3階より一階上に上がらなければならない。
自クラスへ着き自分の席がある窓側へ。
窓から見えるグラウンドを除くと、隅の方にあるサッカーゴールに向かって必死にシュート練習を続ける男子生徒が目に留まった。
「はぁ…かっこいい。」
小木昇李。
成海達の入学式の日、成海がトイレはどこかと迷っていた時、声をかけてくれたのが昇李だった。
入学して数ヶ月経った頃、昇李が学校の女子に大人気なアイドル的存在だと知った。
明るい髪と整った顔立ち、爽やかな笑顔に一目惚れし、惚れっぽくコロコロと好きな人が変わる成海が、1年も諦めなかったのだ。
中学の同級生に話せば『珍しい』と笑われ、高校ではライバルだと裏で敵視されるようになった。
欲しいものは何でも手に入れてきた。
だから今回も絶対____。
そのためには、協力してくれる''友達''が必要だ。
自分の邪魔をしない、誰の悪口も言わない、それでいて自分と真反対の人間。
それはすぐに見つかった。
無口で真面目で、男みたいにカッコよくて、頭が良くてスポーツができて男に媚びない。
それは''成海''という存在を引き立てるのに十分だった。
お互いがお互いを引き立てあって、''成海''の個性を存分に発揮できるような人間。
____八木誠。
絶対に離さない。
彼と付き合えるまで、あなたは私の駒でなくっちゃ。
「あの質問を何度もまこちゃんにする理由?
そりゃあ気になるのもあるけど___
_____裏切られたら大変だもん、ね。」