「まこちゃんはさ、恋人と友達のどちらかしか助けられないとしたら、どっち?」
成海が誠にこの質問をした回数はきっと数えきれないほどだろう。
誠はいつものように『友達』だと即答し、成海の意見を真っ向から否定する。
__どうして?
成海にとって、誠の意見は疑問だった。
友達がおらずとも恋人がいれば一生幸せに暮らせるし、相手が玉の輿なら生活には困らない。
愛する人なら束縛も許せる。
しかし、相手が極度のダメ男ならさすがに無理。
成海自身は普通の意見だと思っていたが、どうやら世間は違うらしい。
誠が職員室へ用があると言って教室を出た後、成海は自クラスへ戻るべく早々と残った弁当を食していた。
「佐倉さんだよね?5組の。」
「うん、そうだけど、どうしたの?」
成海達のすぐ側で弁当を食べていた女子が、成海に声をかけてきた。
「いつも八木ちゃんにあの質問してるけど、なんであんなこと聞いてるの?」
八木ちゃんとはおそらく誠のことであり、誠のクラスではそう呼ばれているようだった。
あまりにも回数の多い成海の質問に誠が困っているだろう、と心配した女子が声をかけてきたらしい。
「んー、気になるからかな?」
「なら一回でいいじゃん。」
「いやいや、人の意見ってころころ変わるものだよ?まこちゃんだって、ずっと''友達''を選ぶとは限らないでしょ?」
「でも八木ちゃん困ってるじゃん。友達なんだからちゃんと見てあげなよ。」
「ほんとに?なるには気にしてないように見えるよ!
そっちこそ同じクラスなのに何も見てないんだね。」
「は、はあ?何言って_____。」
「じゃ、なるは自分のクラスへ戻りまーす。」
『ばいばーい。』と軽くウィンクして返すと、女子達の顔はあからさまに歪んだ。