数日後。
公式戦が間近に迫ったある日のことだった。
希美が風邪を引き学校を休んでいたため、部活を終えた誠は1人で駅へ向かっていた。
ホームへ上がるための階段を登ろうとしている1人の男子生徒の姿が、誠の目に留まった。
男子生徒は、松葉杖をつきながらも両手に荷物を提げ、わずかな歩幅で段差を一段ずつ登っていた。
後ろ姿に見覚えがあった誠は駆け寄り、あの日のように気づけば声をかけていた。
「あ、あの。手伝いますよ鹿島先輩。」
「っわ、ビビった…。八木さんか。いいよ全然、余裕だし。」
「そうは見えません。その手提げ貸してください。」
「…ありがとう。」
渋々荷物を渡した翔里の額には汗が伝っており、相当しんどかったのだと察した。
ちらりと見えた手提げの中には、おそらく学校の図書館で借りたであろう本が大量に入っていた。
その中身は、『怪我を早く治す。ストレッチ』だとか『即効リハビリ方法』だとかいう本ばかりだった。
もう一つの手提げの中からわずかに見えるのは、『バスケがもっと上手くなる!ハンドリング術』、『チームワークを高める練習法』といったバスケに関する本が入っており、本人が怪我やチームのことを1番に考えていることに、誠は思わず、
「すご…。」
と心の声を漏らしてしまった。
「え?」
「あ、いや、なにも…。」
当然のごとく反応した翔里に苦笑いで返し、遅いながらもようやく階段を登りきり、2人はホームへ向かった。

