「まこちゃんはさ、恋人と友達のどちらかしか助けられないとしたら、どっち?」
「友達、って何回言わせりゃ気がすむの。」
5月中旬。
桜も散り、ようやく春の暖かさがやって来た頃。
高校2年の八木誠(やぎ まこと)は、同級生である佐倉成海(さくら なるみ)と昼食の時間を過ごしていた。
誠はクラスの中でも比較的静かで、女子バスケ部に所属するスポーツ女子。
成績も普通よりは上。
学年でも随一に短髪の似合う女子だと噂になったり、程よく筋肉のついたルックスは女子も惚れ惚れするほど。
成海は黙ることが苦手で、常に何か話していないと落ち着かない。
吹奏楽部に所属していて、ほんわかした雰囲気が男子に人気。
成績は普通。
ふわっとした長い髪、もちもちの白い肌。その姿はまるで可愛い系の代名詞のようだ。
「成海は?やっぱ恋人なの?」
「当たり前だよー。だって一生一緒の人かもしれないんだよ?
友達はいなくても、恋人がいたらそれだけでモチベーション上がるよ?」
「でも友達だって一生ものだよ。恋人がいなくても、友達がいれば寂しくはないじゃん。」
「わかってないなぁまこちゃんは。」
2人がこの話題を話しているのは今に限った話ではない。
毎日のように成海の口から出るこの話題は、最初はクラスの人間も気になって聞いてはいたものの、今となっては気にする様子もない。