「どったの誠〜、なんか元気ないね?」
「希美…うんまぁ、ちょっと寝不足で。」
「珍しいねー、夜更かしもほどほどにしなよー?もうすぐ公式戦なんだから。」
「あー、うん…。」
''もうすぐ公式戦なんだから''
希美がそう言った瞬間、誠の脳裏に昨日の出来事がよぎった。
最後の夏になりかねない3年生にとって、翔里の怪我は致命傷だ。
きっと心の底までぽっかりと穴が空いている状況なのだろう。
そんな翔里に、『諦めないで下さい。』なんてことを言ってしまった。
挙げ句の果てに翔里は涙まで出してしまったのだ。後悔のほかない。
「翔里くんアキレス切れたって…。」
「うそー…エースなのにね。」
「男子勝てんのかな?」
「仕方ないけど予選敗退かもねー。」
3年の先輩から聞こえてきた声に、誠は思わず耳を塞ぎそうになった。
すでに怪我の話は学校中に広まっているらしく、当の本人は病院に行くためしばらく休みとのこと。
「え、うそ…。」
「希美?」
「翔里先輩怪我したの?」
「そ、そうみたいだね。」
「そんな…。」
希美は肩を落とし、見るからに落胆していた。眉を下げ、今にも泣きそうな表情で男バスの方を見つめている。
誠は表情にこそ見せないが、心の中ではかなり驚いていた。
男子の話が出てもまったく興味を持たずバスケに夢中だった希美が、翔里の話が出た途端顔色を変えた。
鈍感極まりない誠には、なぜ希美がそんな表情をするのかさっぱりわからなかった。

