この時が、何時でも幸せなのです。

今日は、誰も居らっしゃらない場所を、確保することが出来ました。

大きな木の木陰です。

私はそこで、毎日の日課である、昼休みの練習をしている最中でした。

リョウさんの音を聴けることが、私にとっての幸せな時であるのです。

どれ程、気持ちが乱れている時でも、私の体、全身を使って音を発すれば、落ち着かせることが出来るのです。

基礎練習の途中まで来たところでしたが、無性に曲を奏でたい気分になりました。

ファイルの楽譜をめくっていくと、あの曲がありました。

私に自信をもたらしてくれた、セレナーデです。

果たして、あの方に届いたでしょうか。

楽譜上の音符を目でなぞりました。

優美に踊っているような姿たちを見ていると、ますます感性がくすぐられます。

何頁かめくった後、何気なく、目に留まった曲があったのです。

これにいたしましょう。

優しい曲調の、ロングトーンが多い曲を選びました。

ビブラートをこれでもか、と言うほどにかけます。

私の体を包むような、丸に似た音に、より添える気がするのです。

とても心地よいのです。

さて、しかし文化祭の有志発表では、皆さんどうだったのでしょう。

少し不安はありました。

しかし、私は楽しめたのです。

それで、不安は全て、消し飛びました。