「あ、あのですね…マネージャーの組が、お化け屋敷をしているんですよ。よかったら、行きますか?」

「お、お化け屋敷、ですか…?」



これは新しい表情だ。

萩原さんは、困ったように微笑んでいる。

なるほど、苦手なのだな、それがよくわかった。

しかし、お化け屋敷とは言っても所詮、素人の作ったものだ。

気を失うほども、恐くはないだろう。

そして、大きな声を出すのも、日頃の気分転換になるのではないか、と俺は思っていた。

すると、彼女が二度目を尋ねた。



「お化け屋敷とは…あのお化け屋敷ですか…?」

「はい。行きますか?」



萩原さんは、未だ悩んでいる。

座っていても座高の差があるため、萩原さんはゆっくりと俺を見上げた。

それは恐る恐ると、だった。

そして、こう尋ねられたのだ。



「…江波くんも、一緒に入ってくださいますか?」

「もちろん」



何故だ?今日はやけに、彼女が愛らしく見えてしまう。

俺が、祭の効果に魅了されているだけなのか?

自然と気持ちが昂る。



「…江波くんが傍に居てくださるのなら、私、頑張ります」



本当に苦手なのだろう。

軽い罪悪感が、今更になって訪れる。

しかし、女子に頼られているのだ。

男にとって、この上ない喜びである。

さらにこの後、彼女の新しい一面を見ることが出来るのだ。

たった今は楽しすぎて、経過した時間すらもわからない。

やはり、俺はまだまだ、持ち場に戻れそうにない。






Scene 16 二日掛かりの御祭騒ぎ~2日目~