「焼き鳥、いかがですかー!」

「クレープでーす!おいしいですよ!!」

「綿菓子、作っていきませんかぁ!」



ここらでは、売り上げ競争が行われている。

今日は、文化祭の2日目だ。

学内の全てが、模擬店と生徒、一般客とで溢れている。

俺たちの組の模擬店も、そのうちの一つであるのだ。



「そこのお姉ちゃんら!そう!そこの別嬪さん!たこ焼きやで!形、歪やけど、めっちゃ旨いから!450円やで!寄っててぇやぁー!!あっ、ちょっとぉ!」

「五月蝿ぇよ!!」

「五月蝿ぇは、ねぇだろ!お前等が『唯一、関西圏出身のお前が宣伝係しろ』っ言(つ)ったんだろ!俺、そもそも大阪出身じゃねえのに!本場の方、聞いてたら、シバかれるわ!」

「はいはい。休め、とは言ってないよ。落ち着けって言ったの」

「めっちゃ厳しいやん!」



うちの組のたこ焼き屋は、いつも通りの野球部の乗りで成り立っていた。

俺ともう一人、よく叫ぶ奴でたこ焼きを焼き、転がし続けている。



「しっかし、たこ焼き、小さなパックに6個しか入ってなくて、450円は高ぇよ」

「本当だよ。誰だ、価格設定したの。こんなの売れるわけ──

「あの、すみません」



チームメイト兼友人たちが愚痴を吐いていた時、一人の女生徒が店口にやってきたのだ。



『はい!らっしゃーせー!』

「これで、たこ焼き一つください。」

『はい!ありがとうございまぁーす!』



うちの野球部の特徴は、大体2つに分かれる。

一つは、女慣れしておらず、意思表示することなどを躊躇い、落ち着かなくなる奴。

つまりは、俺のような奴のことを云う。

もう一つは、女慣れしておらず、調子に乗って、浮かれる奴だ。

会計を担当しているのは、丁度、後者の2人組だ。