「ありがとうございました!」

「あまり気の利いたことを、言ってやれなくて、すまない」

「いえ!そんなことないっすよ!為になるっす!先輩のスウィング見るだけでも、勉強になりますよ!」



俺と違って、こいつは本当に気の利く後輩だ。

指導を一通り終え、体を動かしていないからか、気が緩む。

すると、不意に声の様なものが、聞こえなくなっていることに気づく。

まるで、その代わりというかのように、しっかりとした声が聞こえた。



「江波くん、お疲れ様です」



声のみで誰であるか、ということが瞬時にわかった。

非常に驚いた。

彼女がまだ学内にいるとは、思ってもいなかった。

ここ最近、彼女がすぐに帰宅している姿を目撃してばかりだったからだ。

俺の目線を、上の方へと持っていく。

肩には、黒いケースを担いでいる。

中身は間違いなく、リョウさんであろう。

やはり、彼女だ。

深海魚の君が、そこに立って居た。