今日も俺は、机には向かわないでいた。

なぜなら、今は進路の面接練習期間だからだ。

3年生の棟の教室は、ほとんどが使用することが出来なくなっていた。

面接の練習は、出席番号の順となっている。

俺は2日も前に、ようやく済んだばかりだ。

早いところ、家に帰って勉強をするべきなのだろうが、どうにも気が乗らない。

帰ったとしても、塾には行っていないため、俺は自室の布団の上で怠惰に昼寝をするだろう。

そのようなことは嫌だ、と思った。

そのような俺が選んだ行動は、他にはたった一つしかなかった。

俺は今、グラウンド内に居る。

もう少し細かくして言うとすれば、バットを握って、グラウンドの隅で素振りをしている。

懐かしく感じるバットを握る感触は嬉しく、堪らなかった。

久しぶりの感覚に浸っていた時、左側前方から声がかかる。



「江波先輩!」

その声は、部活の後輩の者であった。



「今、大丈夫っすか?俺のスウィング、見てください!」



こいつの姿を見て、よく思うことがある。

俺も、先輩に甘えておくべきだった、と今になって後悔している。



『おい、江波。お前、もっと先輩を頼ってくれたって、よかったんだぞ』



頭の中から、懐かしい声が聞こえた。