ある日の休み時間に、私は愛しの江波くんをお茶にお誘いしたのです。

場所は、帰り道の途中にある、近所の公園にいたしました。

さらに、それに加えて言えば、たった今は自動販売機の前にて二人、立ち尽くしているのでした。

何故か二人して動こうとしませんでしたので、私が先陣を切ろう、と思いました。

肩に掛けている鞄から財布を取り出そうとすると、江波くんの目は瞬時に私の動作を捉えたようです。

そして、江波くんは掌を見せるようにして、突き出してきました。

そのまま江波くんは、私の一歩前に出られたのです。



「何を飲みますか?」



ただその一言を言って、私が答えることを待っていらっしゃいます。

ああ、なんて紳士な方なのでしょう。

私がこの様にして、心奪われている間にも、腹を立てることもなく、静かに待ってくださっています。

このままで、しばらく江波くんの姿に見とれていたいとも思いましたが、そういうわけにもまいりません。

とりあえず、自動販売機に並ぶ、飲み物たちの陣容を眺めました。

赤いデザインのストレートティー。

白に青のドット柄でデザインされた、カルピスウォーター。

紫の葡萄がでかでかと描かれている、微炭酸飲料。

黄緑色にデザインされた、無難な緑茶。

どれも、好きなものではありました。

しかし、今の気分ではこちらです。