時は既に、放課後であります。

私はこの後、部活動を行うべく、音楽室へ向かう予定であります。

しかし、その前に行かなければならない場所がありました。

突然に呼び出されたのです。

いいえ、今日は職員室ではありません。

今日は「生徒指導室」でした。

さて、私が一体、何を仕出かしてしまったというのでしょう。

心当たりは、全くございません。

「生徒指導室」と書かれた札のある扉の前に辿り着くと、私はノックを3度いたしました。



「どうぞ」

「萩原です。失礼いたします」



ノックをした後、返事をくださったのは、女性でした。

扉を開くと、返事をくださったであろう女性が、使用していたノートパソコンの前から立ち上がり、こちらに向かってこられました。

その方は、音楽を担当してみえる先生でした。

背が低めの、少しばかりふくよかな方です。

入口に置かれた教材を入れるための棚、人にとってちょうど良い高さの棚に手をつくと、体をやや傾けました。

すると、先生は一度、可愛らしく笑ったと思えば、私に問われました。



「何故呼ばれたのか、わかる?」

「申し訳ありません。全く心当たりが思い当たらないのです」

「うん、あなたはいつだって、一生懸命だものね。それで、あなた、よく廊下を走っているわよね」



突然の先生の発言に驚いて、動揺してしまいました。

いわゆる私はぎょっ、としてしまったのです。

私のことをよく、ご覧になってらっしゃいます。