準決勝 2-1
9回裏 2アウト 1・2塁

うちは前者だ。

うちの野球部といえば大体、毎年二回戦目で詰まってしまうことが定番だった。

だが今は、あと一つ。

あと一つ、アウトさえとれば―

初めての状況に誰もが皆、すがるような想いでいた。

あと一つアウトをとれば、決勝戦なのだ。

内心では皆、興奮しているのだと思う。

メンバーの調子もモチベーションも、見るからに好調だ。

ただでさえ、今の時点でベスト4入りしている。

本来ならば、常連校の名が4つ並んでいるはずだった。

それなのに、ほぼ無名であるうちの学校名がそこに並んでいる。

夢の中で見る夢にも思っていなかった。

新聞にある高校野球の頁なんかでは、うちの学校は「ダークホース」呼ばわりだ。

このような結果を呼び寄せている理由とは、何か。

もともと打ちの打線は、積極的な者が多い。

いや、それもあるが結局、最後には自滅してしまう、いつもそんなものだった。

それよりも、こちらに注目するべきだろう。

たった一人の3年生投手だ。

1年生の頃から、共に朝晩と練習に励んできたが、彼の成長はチームの中でも著しかった。

入部当初、彼の投げるストレートは120km/秒とちょっと、というものだった。

それが今では、130km/秒を余裕で超える。

常連校にとって130km/秒超えることくらいは、当たり前のことなのだろう。

しかし、うちには全学年を合わせて、この3年生ただ一人しかいない。

非常に、貴重な存在なのだ。

彼は、本当に努力家だ。

俺が一番、見習わなければならない。