そうだ、あの人はぶっとんだ人だった。 頭のねじをどこかに落としてきてしまった、残念なひとだ。 私が探しに行った方が早いか、病院で治してもらう方が早いか。 「緋咲、副社長とどこ行ったの?」 「え」 同期で秘書課の河上と一緒にお昼を食べていた。少し声をひそめるので、私も自然とひそまる。 「な……どこ情報?」 「社内の副社長を狙ってる女子は殆ど知ってる。社の前で副社長の車に乗ったとか」 通りでエレベーターの中で視線を感じたのは、そういうことか。 まあ、あんな所で車に乗り込めば、噂にもなる。