『俺は、心結が好きだよ』


「好きだから……何?」


『好きだから、別れたくなんかないよ』


「少し考えさせてもらえないかな?」



気がつくとそんなことを言っていた。



『分かった。俺は心結が好きだってことは忘れないで』


「うん。じゃあ、切るね」



スマホの画面に触れて電話を切る。


本当はあたしも悠貴と付き合っていたい。
本音は今でも大好き。

好きだからこそ、どうしていいかわからない。

自分の存在を認めてもらえないことがショックだった。
気にしないようにしようとしたけど、無理だった。

やっぱり傷ついたかな。

好きだから、傷つくのは当たり前だよね。

好きなのに。
一緒にいたいのに。
離れたくなんてないのに。

本当はそう言ってしまえたらどれだけ楽か。
でも、やっぱり理由を教えて欲しかった。
どうしてなのか。

〝好き〟だけじゃもう足りない。
〝愛の言葉〟が欲しいわけじゃない。

付き合っていくうえで、きちんとあたしに向かってきてほしい。
ただそれだけなんだ。