珠理と「土曜日デート」に出かけた日から、わたしが昼休みを平穏に過ごせることはなくなってしまった。


「ねぇ、ミノと付き合ってるって本当なの?桜井さん」


お弁当は早く食べてしまわないと、こんな風に質問ぜめにされてしまって、なかなか時間がとれない。
…というか、やっぱり失敗だった。絶対失敗だった。最近一緒にいることが普通になっていて、最も面倒なことが背景に隠れていることを忘れていた。


「鎌倉駅とかで一緒にいるところ見たって子がたくさんいるんだけど。ていうか、最近よくE組の方にも来てるよね、桜井さん」


珠理がモテるということ、ただのオネェじゃないということを、わたしは完全に忘れていたんだ。だから今までも気をつけては来ていたつもりだったんだけど、やっぱりあの日出かけたのは、バカだったなあ。


「…何度も言うけど、付き合ってないですってば…」


告白は、されたけど。でも、このミノファンクラブの女の子たちにそれを言ってしまったら、おしまいなのはわたしにも分かる。

ていうか、わたしがE組に顔出してるのなんて、ほんの一部であって、他は全部あのオネェがA組のほうに来てるんだけど…
そんなの言ったところで、この人たちが「そうなんだ」と聞き入れるわけがないよね。

うー、瀬名。助けてくれ。


「じゃあ、もう必要以上にミノに近づくのやめてくれないかな?ミノはね、中学から好きな人いるって言ってたの。だから誰もそれを邪魔しないように静かに応援してきたの!それをあんたに邪魔されたくないわけ!」

「……はぁ」


…その話、この子たちも知ってたのか…。ついこの間まで、わたしもその人のことが「サユリ」なのだろうと思ってたけど、そうじゃなくて、「わたし」だったことが分かった今。

どう反応すればいいか、分からなくなる…。