だけど、その代わり。


苦しくて、悲しくて、寂しくて、辛い。
そんな気持ちにさせてくる、それが夏乃。



「絶対、絶対、藤井のこと忘れるから」

「は?」

「だから、卒業までまた一緒に思い出作ろう藤井」




……夏乃の言葉にムッとする。

なんだ"卒業まで"って。
勝手に俺とお前のタイムリミット決めんなよ。


卒業したら終わりみたいな言い方、腹立つ。


夏乃の中ではきっと、


俺は夏乃のこと1mmも好きじゃなくて、自分ばっかり好きで、だから苦しくて俺のこと忘れて、友達に戻って、

卒業まで楽しく思い出作って……


俺のこと、思い出にしちゃう気なんだろーけど、


……もう、そうはさせねぇから。



「もういいよ」

「なにが?」

「諦めるとか、忘れるとか、避けるとか、そう言うの全部。俺から夏乃が離れてく理由になるもの全部、いらねぇ」

「意味分かんない」

「俺も分かんない」

「もっと意味分かんない」

「……つまりは、夏乃はそのままでいいってことだよ。俺が変わるから、夏乃はそのままでいい」



抱きしめたままの夏乃から、夏乃の匂いがする。ちょっと甘ったるい、やけに女っぽい匂いに


やっぱり理性飛ばしかける俺って……。