「ね、藤井」

「ん?」

「また一緒にいてもいい?」




こいつ、俺に「だめ」なんて選択肢があると思って聞いてんのか?だとしたらかなり分かってねぇよ。


……俺は夏乃のこと、分かってないのかもしれねぇけど。



夏乃は夏乃で、俺のこと分かってねぇ。



「……いい?って言うか。またどこ行く気だよ。そろそろ首輪買おうかと思ってた」

「……え?首輪って、誰の?私の?」

「まつりのお下がりでいいなら、もうあるけど」

「マジトーンで言うのやめない?やだよ、首輪とかマジでやだよ?てか、藤井の犬とか死んでもやだよ」

「まつりに謝れよ」



……あー、これだよ。


俺たちってやっぱ、こうじゃなきゃ。
この掛け合いを2週間ちょっと出来なかっただけで、俺の心は空っぽになったんだから。


……もう、どこにも逃がしてやんねぇ。



きっと、夏乃が傍にいるってこういうことだ。
安心して、温かくて、心地よくて、幸せで。


満たされた気がする。



俺に足りてない部分を、夏乃がくれる。

そんな感覚。