愛すべき、藤井。




***


「夏乃セリフ棒読みすぎ!」

「だって……」

「やる気あんの?」

「ないよ、そんなもん!もっかい言うけどないよ!!」


16時から始まった演劇の練習は結局、先生よりも指導に熱が入ってしまったうめによって18時まで続き、シンデレラ役の私はもちろん、あんまり出番がないはずの藤井までもがくたくたに疲れ果ててしまった。

 
それに、劇の練習中だってのに藤井はどこか上の空で……。
 
 
そんな藤井が気になって練習に集中できない私がうめに怒られるって言う見事な悪循環を発動させてしまった。
 
この期に及んで私の気を引こうなんて、藤井はどんだけ欲張りなんだ。
 
 
「ったく、仕方ない子だね〜。明日はもっとビシビシ行くからね!」
 
「うめ姐さんスパルタじゃない?なんでそんなに熱入ってんのさ」
 
「バカね、私はこの劇にいろいろと賭けてんのよ」
 
「賭けてるって何をよ」
 
「それを夏乃に言うわけにはいかぬ」
 
 
なにそれ。ちょっと怖いんですけど。


うめが企みそうなことを頑張って考えてみるけど、うめと私の頭の中は片っ端から違いすぎるから、何一つ想像もつかない。