頼くんちに到着すると、今日はなにも言わなくても門が開いた。
インターホンを押すこともなく。
そして出迎えてくれた頼くんと頼くんのお父さんに挨拶をして、凰成はすぐに車へと戻っていった。
「希依さん、どうぞ」
「あ、うん
お邪魔します」
頼くんのお父さんはあの時にしか会ってなかったからちょっと緊張したけど
「すごくきれいだ」と散々ほめてくれた。
「頼くんのお父さんって厳しいんだよね?」
「はい、とても厳しい方かと思います。
ただ怒りっぽいわけでもなく、こちらが言われた通りしてれば特に怒ることもありません。
もともと吉良さんの印象はよかったですし、この前の件で希依さんのことも印象よくなっているので、優しいんだと思いますが
全然知らない人をこの家に招き入れることは決してありませんよ」
「へぇ…そうなんだ」
通された客間はそれはそれは立派なもので
ここは洋室でソファも置いてあった。
「あ、それですか?
以前、吉良さんからプレゼントされたというものは」
「あぁ、そう!
これ!読める!?」
「はい、読めますよ」
「…意味は、まだ教えてくれない?」
「そう、ですね…
…あ、その指輪も吉良さんからですか?」
「あぁ、これ?うん
なんか、お母さんのものなんだって」
「…では、その指輪の裏側にも、同じ言葉が刻まれていると思います。
その指輪はおそらく、吉良さんのお父様がお母様に贈られたものだと思うので」
頼くんがそういうから、私は指輪を一度外して、裏側を見た。
「…え?ううん
違う言葉が刻まれてるよ?」
「なんと刻まれていますか?」
「beloved…こっちは英語だから読めるや」
「…では、やはり同じ言葉ですよ」
「え?」
「ただ言語が違うだけで」
「え、ってことは…」
「最愛、ですよ」
頼くんはすごく優しい表情で、そういった。
…でも、このブレスレットは凰成と付き合う前…
10月の私の誕生日の時だ。
じゃあ…凰成はそのころから私のこと…
…なんだ、全然知らなかった。
全然知らなかったよ…


