私と結婚してください。




「そういうのはね、男の人がつけてあげるのよ!」


そんなことを美容師さんが凰成に吹き込むもんだから


「動くなよ」


本当に、凰成が私にネックレスをつけてくれることに…

でもなんか、前から腕を回してくれたらドキドキするもんだけど
凰成は普通に後ろから。

ドキドキもくそもないわ。全く。
女心わかってないんだから。


「あ、イヤリングは自分でつけるから」


こればっかりはさすがに。
耳触れるのもくすぐったいし。


「よし、オッケー?もう行く?」

「希依、あとこれ」

「ん?」


凰成の手には、もう一つ箱。
凰成が開けると指輪が入っていた。


「え、どうしたのこれ」

「これは母さんの」

「え?」


そういうと、私の左手の薬指に。
…神楽の指輪もついてるけど、それに重ねて指輪をつけた。


「これでよし。
時間ないし行くぞ」

「え、うん」


美容師さんにお礼を言って、お金を払うことなく店を出た。


「ねぇ、お金いいの?」

「あぁ、行きつけの店とかはツケで、あとで家のやつがまとめて金払うんだよ」

「へぇ、そうなんだ」


ツケ。
ツケって…なんかあんまいい印象なかったけど
こういうセレブの世界では当たり前なのかな…

凰成を庶民の生活に近づけることはしてきたけど、私がセレブ生活に近づこうとしなかったから慣れないや…