次の日、私は担任のところへ朝一番に向かった。
「先生、私音大を受けてみようと思うんです」
「えっ!?」
「今からでも、間に合いますか?」
「え、あぁ…間に合うけど
でも本当にいいのか?せっかく神楽にいるんだから、うちの大学なら好きな学部選べるんだぞ?」
「いいんです。私、やりたいことってとくにないんです。
やっぱり、私にはバイオリンしかないんです」
ずっと、私にはバイオリンしかなかった。
そして今考えても、やっぱりバイオリンしかないんだ。
「きっとこのまま大学進んでも、絶対つまずくと思うんです。
やっぱり勉強は難しくて…
私はその勉強の時間をずっとバイオリンにつぎ込んできました。
だから私にできることって、やっぱりバイオリンしかないんです」
「…そうか」
「この前凰成にバイオリンを教えて思ったんです。
やっぱり好きだなぁって。
たとえ演奏者になれなくても、指導者になりたいって思ったんです」
「…わかった。
そこまでいうならそれで進めていこう」
「よろしくお願いします」
もう、これでいいんだよね。
…また椎依と一緒か。
とことん双子だなぁ。やりたいこと一緒か。
まぁ専攻は違うけど。
それから教室に戻った私は、すぐに凰成にそのことを報告した。
「…へぇ、じゃあとりあえず受けてみるんだ」
「うん。まぁやれることはやっとこうかなって」
「まぁ落ちたらたぶんここの大学入れてくれるしな」
「え、でも受験終わったあとでしょ」
「大丈夫だよ。神楽だから」
…なんか、神楽様様だな…
さすがっていうか、なんていうか…
「ってか、今日放課後俺んち行くんだけど希依予定ある?」
「え、凰成んち?なんで?」
「両親共々家にいるから帰ってこいって。
夕飯一緒にって言ってたけど」
「え、じゃあお母さんもいるってこと?」
「そういうこと。
だから夕食のオーダーするなよ?」
「うん、わかった」
なに、その急展開…
めっちゃ緊張するじゃん…


