お父さんがそういうと、凰成は私の横にきて、私に手を差しのべた。
「希依、帰るか」
「……うん」
その手に私の手も重ねる。
私も信じるよ。この凰成の温もり、優しさ。
いつだって、きっと側にいてくれるよね。
「ちょ、ちょっと待てよ!
俺は納得できねぇ!俺はずっと…」
ずっと静かにしてたのに
ここで兼城幸太郎が騒ぎ出した。
なんなんだよ、いまさら…
「ずっと…、なに?
もしかして、希依のことが好きって言いたい?」
でも、それに答えたのは凰成だった。
「そ、そうだよ!」
「それだったら
好きな人が幸せになろうとしてるのを応援するのが男だろう?
好きな人のために身を引くのが男じゃないのか?
それに…」
凰成はそういうと、こいつに近づいて、なにかを言った。
なにか言うと、凰成はまた私の手を握って
「帰ろう」
私を立ち上がらせた。
「先帰るわ」
「あぁ。俺はもう少しここで仕事の話をしていく。
…希依さん、後日またゆっくりお会いしましょう」
「…はい。その日を楽しみにしています。
失礼します」
凰成のお父さんに頭を下げ、私は凰成と料亭を出た。


