「ねぇ、父さん
俺と希依さんの縁談話はいったいどうなってんの?」
は!?
「あぁ…、そうだな。
希依さんも春には卒業だもんな。
そろそろ考えていかないとな」
い、いやいやいや!!
むりだから!絶対無理だから!!
こんなやつと結婚とか、まじで本気で嫌だから…
私は必死に目でお母さんに訴えた。
「…ま、まぁ急ぐことはないんじゃないでしょうか。
希依も今は高校生活を満喫したいみたいなので…」
「そ、そうなんです」
むしろ高校生活が急がしすぎてそんなことしてる場合じゃないんだよ、こっちは!!
「でも希依さん、進学もとくにはしないんですよね?」
そんなことを、兼城さんの奥さまに言われて気づいた。
そういえば私、高校3年生。
進路ですか?未定です。
はい、未定……
「そ、そうだよ!
お母さん、私進路どうするの!?」
「え、今ごろそれ言うの?しかも今?」
「いやなんか忙しすぎて忘れてた…」
ってかみんなはどうすんの?
凰成はどうすんの?
進学するにしても勉強してる?
受験するの?一般入試?
先生もそういう話全然しないんだもん、忘れてたよ…
「でも希依さんは結婚するんでしょう?」
い、いや奥様…
そんな当然のように聞かれても…
あなたのお子さんとは結婚したくないのですよ…
────ブーッ,ブーッ,ブーッ,
空気が張りつめ、静かになった頃
「申し訳ありません、会社から電話が…」
お父さんのスマホが震えた。
「お気になさらず、どうぞ」
「失礼します」
た、助かったー…
いいタイミングで電話キター。
お父さんは立ち上がったものの、この部屋からは出ずに後ろに振り返って電話に出た。
「もしもし、こんな時間にどうした?」
仕事の電話がこんな時間に来るなんてね。
もう19時半よ。こんな時間まで仕事してんのね。
「…え!?」
電話中ということもあり、静かにしていた私たちだけど
お父さんは珍しく大きな声を出した。
「え、ちょ…それ本当か?
………あぁ……
…………え!?」
お、おい…お父さんどうしたのよ……
「え、今から!?
いやでも場所…」
普段から明るいには明るいけど、こう大きな声は出さないお父さんが、珍しく何度も大きな声を出して
どうした?なにがあった?仕事でトラブル?
と、ちょっと母と心配になっていた頃
───コンコン、
「失礼いたします」
ここの部屋の襖が開いた。
「タカナシ内装さんの、高梨社長ですね」


