「希依と凰成、全然戻ってこないね」

「…っていうか、なんで俺の部屋にめぐちゃんがいるわけ?」

「なんでって、暇だから?
別にいいじゃない、正式な姫は私なんだから」

「…あっそ」


凰成と希依ちゃんが出てって4時間
俺たちの夕食もとっくに終わり、あと1時間で消灯時間だというのに
あの二人はまだ戻ってきていない。


「え、どこ行くの?」

「頼んとこ」


本当は希依ちゃんに連絡した方が早いんだけど
希依ちゃんのスマホは部屋におかれたままだった。

普通、家に戻るならスマホは持っていかないか?
…まぁ希依ちゃんはいつもそんなにスマホ触るタイプではなかったけど…


「なぁ、頼」

「あれ、竜司どうしたー?」


鍵が共有だから、俺は躊躇なく伊織の部屋のドアを開ける。

いつまながらこの時間には二人ともすっかりルームウェア姿で、二人で映画を見ていた。


「いや伊織じゃなくて頼なんだけど」

「…どうされましたか?」


頼は映画を一時中断して、こちらへと歩いてきた。
たぶん頼のことだから、俺がなんの用でここに来たかわかってるくせに、どうした?なんて聞いてくる。


「希依ちゃん、まだ戻ってきてないんだけど」

「自宅に戻られたので、ゆっくりされてるのでしょう。
食事も済ませてくるようですので」

「…それ、本当か?」


もしかしたら、希依ちゃんは凰成と一緒なのかもしれない。

希依ちゃんならわかるけど、凰成がこんな時間まで寮に戻らないのは明らかおかしい。
今の凰成がそんな長く留守にする理由なんて、他にないよな…


「…本当ですよ」


本当、か…でも
恐らく頼は俺らに対してとは違う、特別な想いを希依ちゃんに馳せているはず。
…それが確かなことかはまだ曖昧だけど
恐らく、頼は希依ちゃんには特別な想いを馳せている。

そんな頼なら、希依ちゃんの味方をしてもおかしくないよな…