「歩きで行けるから車なんて呼ばないで。
10分も歩けばつくのに。」
「えー、そんな歩くの?」
「これだから金持ちは…」
「いいんじゃね?たまには。
俺ここら辺歩いたことほぼねぇし。
行くぞ。」
「え、ちょ…」
急に隣に来て、急に私の手を握った吉良凰成。
でも、すぐに私の手のひらに違和感を感じて手を開いてみれば
「……それはもうお前のなんだから、勝手に返してくんなよ」
さっきの指輪がちゃんと私の手に包まれていた。
「…ったく、仕方ないわね」
ま、いいや。
せっかくだもん。最後の一年全力で楽しんでやる。
というか、こいつの相手を1年間してたら、あの嫌いなやつと結婚してもどうにかなるかもしれないし。
これも花嫁修行だと思うことにしよ。
「で、どっちだよ」
「駅の方」
「駅ってどっち」
……さすがにこんな世間知らずじゃないだろうし…