私が初めて恋をしたのは、高校の臨時教師。


毎朝電車で見かけていたその人は、私の苦手な世界史の先生。

話しかける勇気がなくて、何となく避け気味だった筈なのに、先生になってからさりげなく話しかけられるようになった。


だけどそのせいで、恋をしちゃいけない壁みたいなものが出来た気がする。


それに、イケメンでクールで、更に優しい先生は、女子生徒にモテモテ。

男子生徒にも人気がある。


私なんかが近づける筈がなかった。


でも、あの日、そんな私が変わった気がした。



いつものように電車に乗ると、私のいつもの席が、既に座られていた。

座っていたのは、寝ている先生だった。


その寝顔があまりに綺麗で、私は見惚れてしまった。

しばらく眺めていると、急に電車が揺れて、それで先生が目覚めた。

それからすぐ見ていたことに気づかれ、じっと見られた。


目を逸らすことも出来ず、見つめ合う私と先生。

先生は、ガラガラの電車内の中で、ポンポンと、隣の席を叩いた。

「座らないのか?」


ドキッとしたけど、これは社交辞令だよな…と少しガッカリする。

そんな自分に少し呆れながらも、先生の隣に座った。


特に何もせず、ドキドキは消えないまま。

私は、居づらい空気に耐えきれず、先生に話しかけた。


「先生って、この電車よく乗るんですか?」


「まあな、家がちょっと遠いんだ」

「お前も毎朝乗ってるだろ」


「え…」

先生、私のこと見てくれてたんだ…。


私は何故か、ホッとした。

ただ、毎朝他に誰も乗ってなかったから目についただけだろうに。


それでも先生が、私に気づいていてくれてたのが嬉しい。

「気づいてたんですね」


「毎朝見かけるし、今は生徒だからな」

生徒、か………。


もし、私が先生の生徒じゃなくて、先生が私の先生じゃなかったら、恋、してよかったのかな……?

認めたら、この想いを隠しきれないと思って、認めないようにしてた。


でももう、認めざる終えない。



私は---------------先生が好き。