私は鮎原琴乃。

派遣のプログラマー。

そろそろお腹が空く頃だ。

今朝もクロワッサンとカフェオレで済ませた。

ランチには少し早い時間だが外出した。

隣の会社が社員食堂を一般にも開放しているので

とても助かっている。

なぜなら付近に飲食店がないからだ。

と言っても

一般人が食べているのを見たことがない。

おまけに欧州系の企業なので

メニューもかなり違う。

昼間からアルコールが許可されていて

ビールもワインも飲めるというカフェテリアとなっている。

羨ましい限りだ。

カウンター越しにいつものように声をかけた。

「おばさん、いつもありがとう。」

今日はスープパスタに決めた。

「琴乃ちゃん、ここは朝8時からやっているのよ。簡単なものだけどね。」

「そうなの?じゃ、明日の朝、寄ろうかな。」

コンビニも駅前まで行かないとないので困っていた。

まだ11時半だ。

カフェテリアには私しか居ない。

窓際の席に落ち着いた。

「ここ、一緒にいいかな?」

長身のハンサムな男性に声をかけられた。

「構いませんけど。」

自分でも今のトーンは冷たいと思いつつ

ペリエの小瓶を手に持った。

「君はうちの社員じゃないよね?たまに見かけるよ。いつも一人だ。」

「はい、隣の社の者です。」

「ふ~ん。」

彼も私と同じメニューだ。

お互い無言で食べた。

食べ終わりそうな頃合いにまた問われた。

「俺は相川丈之介。5階にいる。君はSEか?」

「私は鮎原琴乃。プログラマーです。」

「昼はいつもここ?」

「はい、殆ど毎日。」

「この辺はコンビニもないから不便だよな。」

低音で太い声の持ち主は

食べ終わったらコーヒーに付き合ってくれないかと言った。

私は丁寧にお断りした。