「あの……」

「遠慮するな、頂き物だ。それに俺は塩分も糖分も制限されている」

「ーーあっ、ありがとうございます。秘書室の皆さんといただきます」

「君は欲がないな」

会長代行は静かに言って、フッと笑った。

紅茶のカップをゆっくりと、口に運ぶ。

「良い香りだ」

1口、口を湿らすとコトリ、静かにカップを降ろした。

再び、カタカタとパソコンのキーを叩く小気味良い音がする。

紅茶、美味しくなかったのだろうかと不安になった。

わたしが会長代行をチラチラ見ていると、わたしの視線に気づいたのか、会長代行が手を止めた。

「すまないな、せっかく淹れてくれたのに。水分制限で1日の水分量が決められている。食事と服薬分で制限ギリギリの状態だ」

淡々と話す会長代行の瞳が真っ直ぐ、わたしに向けられている。